発見!ーーここにこんな人が!
>>> メニューページに戻る アーティスト 青柳 礼子さん
現在、カーディフを基点に、アーティストとして活躍されている青柳礼子さんは、千葉県生まれです。1977年に茨城大学教育学部、小学校教員養成課程数学科を卒業と同時に、アーティストとなることを決意しました。いろいろな分野に興味があったので、細かく専門家された日本の大学の構造に疑問をもち、海外でアートの勉強を始めようと思い、1979~81年、ロンドンのリッチモンドカレッジで、アートの基礎を学びました。その後、日本に帰り、塾講師などをしながら製作を続けました。当時は絵画が中心で、1992年から東京で少しずつ発表を始めました。10年間日本で個展グループ展で活動した後、もう一度、広い社会の中で自分を見つめ直したいと思い、来英。1992~93年、ロンドンギルドホール大学、1993~95年カーディフのウェールズインスティテュート大学でアートを学びました。
語学のハンディを乗り越え、青柳さんが、アートで生きていく道を確立するまでには、想像以上の努力を要したことでしょう。そうした苦労を見せず、青柳さんはどんな場合も穏やかにゆったりと語ります。相手への気遣いを常に忘れない繊細な感性と同時に、意志の強さと強い精神力を内に秘めているのを感じます。
さて、青柳さんの最初の作品展示は、1982年東京都美術館で実現し、この時は絵画の作品を展示しました。1991年までは日本での作品展でしたが、英国留学後の1994年からカーディフを皮切りに、1996年のポーランド(ロッツ)や2001年のオーストラリア(シドニー)と、英国以外でも作品展を行うようになりました。2006年には、アメリカのニューヨークのアートパークで、作品を作りました。 青柳さんの作品は、空間アートです。2年前のカーディフの展示会では、真っ暗な部屋に複数のライトを配して、それが点滅する不思議な空間の作品を作り出していました。1996~97年に、ウェールズアーツカウンシルから、ビジュアルアーツプロジェクトアウォード、2004年と2006年に、ウェールズアーツインターナショナルから、プロジェクトアウォードを受賞しています。 作品を制作する時、青柳さんは、その場所へ行ってアイデアを発見することから始めることが多いそうです。昨年のニューヨークの展示場は、自然がかなり残っている公園だったそうです。ここで青柳さんは、「表面的に美しい公園だけれども、表面下にある物が堅い、オープンでなく窮屈で開放されていない」と感じたそうです。地下に水があるかもしれない、(後で実際に調べると昔、井戸があった)と感じて、最初は川という字のような三本線で地面を掘ることを考え、申請しましたが、クレームがきてしまいました。この土地は、もともと個人の所有地だったのが20~30年前に公共の物になりました。元の所有者だった老婦人は、今もその土地を自分の庭のように感じているので、そこに海外から来たアーティストが穴を掘りたいなんて言ったものだから、反対するのは当たり前だろうと、この反応は青柳さんの予想通りだったとのこと。 では、どうやって許可を得たのでしょうか。さらに興味がふくらみました。普通の人なら、ここであきらめてしまうところですが、青柳さんはその後自分の意図していることや考えを、公園管理委員会に地道に伝えていきます。10人位の委員の前で、説明したこともあるそうです。「こうした交渉やコミュニケーションも、私にとっては作品の一部なんです」と青柳さん。展示物は結果であり、製作途中に心で感じたことや苦労したことを、そこで手で触った感覚と一緒に、将来どこかでふと思い出すことがあるだろう、それも大切な事柄なのだと言います。結果だけがすべてなのではなく、頭の中のアイデアが少しずつ形ある物になっていく過程を慈しみ、大切にされていることを知りました。
こうしたことから、ニューヨークの作品は、完成するまでにとても時間がかかりました。閉鎖的な環境に啓発され、途中で出てくるアイデアも取り入れて、お堀のような溝を地面に掘った作品がやっと完成したわけです。「これからここに雪が積もったり、草が生えたりするでしょう。いわば地面につけた傷が、これから癒えていく過程になります」という言葉に、作品ができあがったからそれで終わり、ということではなく、過去、現在、未来という時間の流れを意識した作品作りをとてもおもしろいと思いました。青柳さんの発想のスケールの大きさを感じます。
ここにウェブカメラをつけて、これから起きる変化を他の場所からも見えるようにしたらどうか、という案が出ましたが、予算的な問題からこの案が実現したのは、帰英後半年してからです。IT技術の普及で、ニューヨークとカーディフがつながりました。*
「作品が地下をたどると、地球の反対側とつながる。そしてインターネットで他の場所とつながる。こうしたつながりを実験的にやってみました」と青柳さん。豊かな発想とアイデアで、次はどんな場所でどんな作品が生まれるか、とても楽しみです。現在は、バーミンガムの再開発地域で。新しくできる建物と環境に密着した半永久的な作品の準備をしているそうです。「何年もかかるプロジェクトで、また建築家と一緒に仕事をしていますが、こういう経験は初めてなので、とまどいながら進めています」と意欲的に活動を続けられています。
* ニューヨークのアートパークのホームページで、今でもウェブカメラで映像が見られます。 www.stonequarryhillartpark.org/webcam3.htm
* 青柳礼子さんのホームページ www.reiko-aoyagi.com
( 記 田口知子)
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