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今回は、今夏に1年間のカーディフ大学における研究生活を終え、ご帰国された裁判官の高橋信幸さんご本人に、カーディフでの生活を振り返って頂きました。
ウェールズに滞在して
仙台家庭裁判所 判事補 髙橋信幸
私は,平成20年7月から1年間,在外研究として,カーディフ大学ロースクールにおいて,刑事法の勉強をするとともに,カーディフやその周辺にある裁判所などを訪問して調査・研究をしていました。
私が,在外研究員としてカー ディフ大学に派遣されることが決まったときには,ウェールズ地方は知っていましたが,カーディフという地名は知りませんでした。家族3人で渡英する予定で したので,カーディフでの生活をどのように始めればよいのか悩んでいました。インターネットで情報を検索していたところ,ウェールズ日本人会のホームペー ジと出会うことができ,これがきっかけとなってウェールズに住んでいる日本人の方々と知り合うことができました。また,カーディフで生活を始めるときには 住宅探しなどに協力していただき大変感謝しております。
私の研究テーマは,イングラン ドとウェールズの刑事法です。日本では平成21年5月から一般市民が刑事裁判に参加する裁判員制度がスタートしており,これをスムーズに実施することが大 きな課題となっています。イギリスでは,裁判員制度と同様に一般市民が刑事裁判に参加する陪審制度があります。これは,イギリスの刑事司法制度の特徴に なっており,その歴史も長く,市民にも広く受け入れられています。そこで,カーディフ大学ロースクールにおいて,刑事法の基礎を学ぶとともに,裁判所など を訪問し,裁判の傍聴,裁判官や職員との面談や資料収集を通じて,陪審制度の実情を調査・研究していました。
ここで,ウェールズの法制度な どを簡単に紹介したいと思いますが,ご存知のとおり,イギリスは,ウェールズの他,イングランド,スコットランド及び北アイルランドで構成されており,司 法制度については,スコットランドと北アイルランドは,それぞれイングランドとは独立した独自の制度を持っています。これに対して,ウェールズは,長い間 イングランドの一部であったという歴史的経緯があることから,イングランドから独立しているものの,法律については原則としてイングランドと同じ法律が適 用されており,司法制度についてもイングランドと一体となっています。このことは,ビジネスの分野ではウェールズに有利に働いていると思います。
そして,ウェールズ議会政府の立法権は,教育や文化など特定の事項に限られている上に,イングランド政府にはウェールズ独自の法律等を拒否する権利が留保されています。ただし,イングランド政府はウェールズ議会政府の意思を尊重するとされています。
また,イギリスと日本の刑事裁 判との違いですが,裁判官だけでなく,検察官や弁護人も黒色の法服を着ている上,女性を含めて白色のかつらもかぶります。ちなみに,イギリスでも刑事事件 の審理は誰でも傍聴可能です。カーディフでは,市中心部のシティホールの隣にクラウンコートがあり陪審事件を扱っていますので,興味のある方は一度傍聴す るのもよいかもしれません。
研究を通じて感じたことは,陪 審制度に対する国民の信頼があること,十分な事前の準備ができれば,一般市民が参加する裁判であっても短期間で終わることができ,陪審員への負担も少ない ということです。また,法廷での裁判官,検察官及び弁護士の陪審員への説明は,理解しやすく,説得的なものでした。これらの実情や工夫などは,日本でも十 分生かすことができると思います。
私が裁判所などを訪問して感じ たことは,ウェールズの人々が大変親切なことです。私がカーディフで研究を始めたときには,イングランドとウェールズの法制度に詳しくなかった上,英語力 にも不安があったのにもかかわらず,ていねいに質問に答えていただき,資料も提供していただきました。さらに新たな訪問先や面談を設定していただけるな ど,順調に調査・研究を進めることができました。また,日常生活においても気軽に声を掛けられるなどウェールズの人々の親切さを実感しています。
帰国すると,ウェールズ・カーディフでの一年間は大変有意義で充実したものであったと改めて実感しています。また,機会があれば再び訪問したいと思っています。これもカーディフにいらっしゃる日本人の方々のおかげだと思います。この場を借りてお礼申し上げます。
(髙橋信幸 記) |