ウェールズ花暦 10 月
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Michaelmas Daisy(ミコマス・デージー): ユウゼンギク ラテン語名: Aster novi-belgii
日本では秋といえば「秋の七草」を思い浮かべる人が多いかもしれませんが,菊も秋の庭の彩りを添えてくれる大事な存在です。ウェールズでも10月ともなれば「庭の千草も虫の音も枯れて寂しくなりにけり」といった風情(とは言っても,今年は10月になっても暖かい日が多く,まだフクシアやバラ,ダリアなども咲いてはいますけれど・・・)でぐっと花が少なくなる中,たくさんの可憐な花をつけるこの花の周りだけ少し明るく見える気がします。英語名ではその種が初めて採集された場所の名前からNew York Asterとも呼ばれますが,この辺ではMichaelmas Daisy(発音記号をそのままカタカナにすると「ミクルマス・デイジー」,でも「ミコマス・デイジー」の方が発音的には近いのでこちらを取りました)と呼ばれることの方が多いように思います。ちなみにラテン語名のnovi-belgiiは「ニューヨークからの」という意味です。Michaelmasとは「聖ミカエル祭」という中世のキリスト教行事で,9月29日に行われていました。その時期に咲くと言うのでこの名前がついたようです。和名の「友禅菊」は花の色が友禅染めのように華やかなことからついたとか。キク科の多年草で北米原産。はじめてイギリスに持ち込まれたのは18世紀初頭,以降交配が重ねられ耐寒性や病気などに強い品種が作られてきました。一重先の他に八重咲きなどの品種ものあり,背の高いもの(60-120㎝)や矮性(わいせい)種(25- 45㎝)などバラエティ豊富で,花色は白や紫,ピンクなどがあります。
Kaffir Lily(カファ・リリー):ウィンター・グラジオラス ラテン語名: Schizostylis.coccinea
花の少なくなってくるこの時期,緑や枯れた葉の色が多い花壇に鮮やかでみずみずしいこの花を見つけるとはっとさせられます。アヤメ科の球根植物で草丈は 60㎝程度になり,花色は深い赤から薄いピンクの間に様々な色調があります。名前はKaffir Lily,なんだか英語っぽくない名前なのはこの植物がアフリカ南部原産だから。実はヒガンバナ科のウケザキクンシラン(受咲君子蘭 Clivia miniata)も同じような地域が原産のため,Kaffir Lilyと呼ばれています。水辺を好むことから,River Lilyとも呼ばれることもあります。イギリスでは特別な意識もなくKaffir Lilyと呼んでいますが,Kaffirという言葉はもともと侵略したイギリスやオランダの人々が南アフリカやスワジランドなどの地域に住む黒色人種の人々の総称として用いていたもので,南アフリカやジャマイカなどの国ではこれらの人を侮辱する言葉だとか。もしアフリカに行ってこの花を見つけるようなことがあっても,Kaffir Lilyとは呼ばずにRiver Lilyの名前で呼んだ方が無難でしょう。こんないわくつきの言葉を付けられるなんて,植物にとっては迷惑な話。日本ではその姿からウィンター・グラジオラスと呼ばれていますが,同じアヤメ科ながらグラジオラスとは種類が異なります。Schizostylisという覚えにくい名前はギリシャ語の schizo「分かれた」とstylis「花柱」という言葉がくっついたもので「花柱(雌しべ)が分かれた」という意味。実際に雌しべが長く3本(ちなみに雄しべも3本)に分かれています。coccineaは「深紅の」という意味です。ところでインターネットを調べているとどうもこの植物, Hesperantha Coccinea(Hesperanthaは「夕暮れの花」という意味)と呼ばれる場合もあるようで,はっきりしません。最近1属1種としてではなく,近縁種のHesperantha属に統合される形で名前が変わったらしいのですが,依然としてSchizostylisという名前の方がよく使われているようなので,今回は昔の名前ででています。
( 狩野 記 ) |