Wales Japan Club logo

ウェールズ花暦  12 月

>>> メニューページに戻る

植物の学名について

今 回は植物の紹介ではなく毎回載せている植物の名前(学名)についてご説明しましょう。少々学問的になりますがどうぞご勘弁を。このコーナーではイギリスで よく用いられる英語の名前:通称(Common Name)と和名,そしてラテン語名を載せていますが,そのラテン語名が学名にあたります。イギリスで公園や庭園に行ったり,植物に関する本を見たりする と気づくのは,植物名の表示に通称ではなく学名が用いられる場合がとても多いことです。そして通称がなくて学名でのみ呼ばれる植物も多いのです。日本では 学名が付記されることはあっても基本的には和名で表記される場合が多いことを考えると随分と状況が違います。勿論,ラテン語やギリシャ語に対する知識や親 密度がヨーロッパと日本では全く異なりますから,日本ではラテン語の名前は受け入れにくいというのも大きな理由でしょう。ただ,多様な植物の原産地となっ ている日本と違い,イギリスは今でこそ園芸大国ですが,原産する植物はとても少なく,大部分が16世紀以降,特に19〜20世紀にかけてのイギリスの海外 進出に伴ってもたらされたものなのです。馴染みの薄い外国の植物が比較的短期間で普及していったということが,学名をそのまま使っている最大の理由ではな いかと私は考えています。従いまして,イギリスでは学名について少しでも知識があると,植物の名前も覚えやすく,また理解の深まり方も違ってくるという訳 です。

植物の学名はラテン語で表記され,国際的なルールに従って決められています。そのもとになっているの はスウェーデンの博物学者リンネの提唱した二名法という方法で,属を表す学名(属名)と種を表す学名(種小名)の二つの部分から成ります。例えば前回のヤ ツデFatsia japonicaの場合はFatsiaが属名,japonicaが種小名ということになります。属というのはよく似た植物同士をまとめて名前をつけたも の,種小名は個々の植物の特徴を示す形容詞のことです。属の上にもっと大きなまとまりとして科というものがあります。属名をみればその植物がどんな植物の 仲間なのか,種小名をみれば原産地や花・実の色,葉の形状などの情報が分かるわけです。しかしラテン語で表記といってもギリシャ語が入っていたり,人名か ら名づけられる場合もとても多いので,その場合は語尾を除いてドイツ語や英語など他言語の表記になることもあります。そして英語にはラテン語に由来する言 葉も多いので,英単語からなんとなく意味が想像できるものも結構あるのです。それでは学名ではでどんな言葉が使われているのかその一端を紹介しましょう。

まずは植物の部位について「花」florus/anthus,「花弁」petalus,「葉」folius/phyllus
サイズについて「大きい」grandis/giganteus/macro/magnus 等,「小さい」 micro/parvi/pumilus 等,
色について「白」albus,「黒」niger「赤」ruber,「緑」viridis,「紫」purpureus,「黄」luteus/flavens,「金」aureus 等々
数について「1」mono-/uni-,「2」bi-/di-,「3」tri-,「4」quadri-/tetra,「5」quinque/penta,「多くの」multi-/poly
地名について「ウェールズの」cambricus,「ヨーロッパの」europaeus,「日本の」japonicus/nipponicus,「中国 の」chinensis/sinensis/sinicus, 「カリフォルニアの」californicus,「オレゴンの」oreganus/oregonensis/oregonus,「東方の・東洋の」 orientalis 等々
その他「斑入りの」variegatus,「よくある・一般的な」vulgaris,「薬用の」officinalis,「香りの良い」odoratus/odorus,「交配種の」hybridus,「潅木の」fruticosus 等々

語 尾については-usで終わる場合はflora,florum,-erで終わる場合はrubra,rubrum,-isで終わる場合はorientaleと いうように変化します。上記はほんの一部ですが,これらが組み合わさって名前が作られることもあり,結構役に立ちます。例えばgrandifloraとい う種小名は「大きな花の」という意味ですし,microphyllaなら「小さな葉の」という意味になります。-iiで終わる種小名(ex sieboldii,davidii 等・・・最後のiは「アイ」と発音されるようで「シーボルディアイ」という風に読まれます)は人の名前であることが殆どで,その植物の発見者(ヨーロッパ からみて発見ということですが)や育種家,植物学者などの名前が付けられています。このようにして学名の意味を調べていくと,名前を聞いただけでどんな植 物なのか何となく想像できたり,名づけられた背景まで見えてくるようで,面白いと思いませんか? これからも花暦では名前の由来について出来る限り紹介していきます。学名についてもっと色々と知りたいという方,今回私は下記の本を参考にしました。アル ファベット順にラテン語を引くことが出来るほか,色やサイズといったテーマでも調べることができます。また主要なPlant Hunterたちの略歴なども載っていて読みものとしても面白いですよ。

PLANT NAMES EXPLAINED-Botanical Terms and their Meaning
David & Charles Book Published in 2005
ISBN: 0-7153-2188-9

( 狩野 記 )