KenのWales 便り - No.1 "春"
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春分が過ぎ、3月28日から時計を1時間進ませて夏時間になった。 北緯52度のこの地でもさすがに日が長くなり、夜は7時半頃まで明るい。 地上では、2月のスノードロップに続き、クロッカス、プリムローズ、そして今は水仙が花盛りとなった。ここでは桜の花も1ヶ月近く咲き、木蓮や、こぶしも今を盛りと咲き競っている。 ‘Wales in bloom’(花盛りのウエールズ)とよくいうが、まさにそんな状態で、心なしか人々の表情も明るくなってきたように見受けられる。 パブでパイントビター、ラガーを飲みながら雑談に花を咲かせる人々からも笑い声が多くなり、聞こえてくる話題も、今年のスヌーカーのチャンピオンは誰かといった種類から、先週子羊が何頭生まれて元気に育っている (中には、あっちの子羊のほうがうまそうだ、などという声も聞こえてくる) とか、昨夜、庭の隅にバジャー(アナグマ)が来たのを見たとか、庭のバラに肥料をやったといった具合に、すっかり屋外の話題に変わってきている。 暗く長かった冬の後の、明るく輝かしい春に酔いしれている。 私が住んでいるここWalesは冬の間は特に曇りや雨が多く、統計的にもロンドンと比較してかなり雨の日が多いので(統計で年間200mmくらい多いという)、地元の人でさえWalesの冬は憂鬱でいやだという。そんな後の春爛漫であるゆえに余計心華やぐのであろう。
私の隣に老婦人が1人で住んでいる。時折出会った際には話をするが、日本人に似て必ず気候の話から入る。「今日は雨が強くていやだね」、や「風が強いね」といった具合に。 先日も、ひょっこりと出会った際に、‘ようやく明るくなって春ですね、長い冬が終わってよかった。’と挨拶したら、‘あなた何年ここに住んでいるの?’とたずねられた。前回の滞在も含めて5冬すごしたことになります、と答えるとすかさず「私なんかここWales でもう70回以上冬をすごしてきたのよ。 ここで70年以上も夏冬を経験しているとね、初めて本当の春のすばらしさがわかってくるのよ。 5回などはまだ子供だね。」とすっと背筋を伸ばしたまま凛とした声で一蹴されてしまった。 きっと彼女は、自分たちが心の中で感じる春は、私が即席で感じている春とはまるで違うということを言いたくて、‘子供だね’といったに違いないと、同時にいかにも英国人的な受け答えと、妙に納得をさせられた。
2004年4月初旬 岡本 記
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