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KenのWales 便り - No.7 " 秋の音楽会♪♪"

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 2週間ほどの日本滞在から、ここWalesに戻ってきたらもうすっかり秋が深まり、というよりも、もう冬に近い様相となっていた。木々はその黄色に色づいた葉を盛んに落とし、鳥や動物たちは冬に備えて旺盛にえさをあさっている。地面にはいろいろな種類のどんぐりが落ちており、注意して歩かないところんでしまう。毎年のことながら、これから来年の春分頃までは青空もなく、暗くて陰鬱な半年間をじっと耐えねばならない。 しかし、この時期には楽しみとして小規模のいわゆるPrivateの音楽会が時々開かれる。 ひなびた教会やら個人の家などで行われるのが通例である。

 先週の日曜日、私がCelloの指導を受けている先生から、自宅で面白い音楽会をやるから来てはと誘われて、のこのこ出かけていった。日本で言えば、古い粉引き小屋を改造した家で、石づくりで30人も入ればいっぱいになる程度の広さであるが、Welsh musicと題したこの日の音楽会は面白かった。はじめにフィンランドの民俗音楽の演奏があった後、Walesの民族音楽に移ったが、楽器はWalesの古い民族楽器Crwth一台に女性歌手一人のアンサンブルで行われた。

 このCrwthなるもの全長が50cmくらいで中が空洞の木製の枠に4本または6本のガット弦が張ってあり、これを全長25cmくらいの弓で演奏する。 弓といっても現代のViolinの弓とはまったく異なり、半月型で、したがって張力はほとんどない。 かなでられて出てくる音はなんともひなびた、しかし愛らしい音で、これに乗せて女性が歌った。この楽器は45世紀頃にはもうWalesにあったようであるがこの形態で使われたのは123世紀頃のことらしい。したがって非常に古い楽器である。
                                                      
 これ以上に興味を引いたのが、この日に歌われた歌である。Aki-no-ongakusai題してWalsh Trystanという。Wales語で演奏されたが、英語訳を読んでみると、多少の違いがあるものの何のことはないかの有名な‘トリスタンとイゾルデ’ではないか。 トリスタン伝説はあちこちにあり一説にはWalesが発祥の地とも言われているが、はっきりはしていないらしい。12世紀にかかれたクレチアンやベルールの書いた物語が残っているらしいが、(私はまだ読んだことがないが)そのあたりが基になっているのであろう。 Walesにはかのアーサー王伝説にまつわる場所が多くあり、従いその周辺の物語も多く伝えられてきたのであろう。しかもコーンウォールとは目と鼻の先、この物語も、案外このあたりから発生して大陸に伝わっていき、中世のミンネジンガーあたりが伝承して最後にはかのワグナーのトリスタンに結実したのかもしれない。

 この日のトリスタンの音楽は、ワグナーがその前奏曲で次々と展開していく壮大な和音のそれとはまったく異なる次元にあるが、こうした狭い空間で演奏される音楽としてははるかに多くの理解が得られるものと思う。きっと中世のミンネジンガーが奏したものとは、このようなものであったのかもしれないと、今まで知らなかった面白い体験をしたと一人ほかほかした気持ちになり帰宅した。
      
                           
                                                    
                                                
                                                                  <Walesの古い民族楽器Crwth奏でるGillian Stevens                                   
                                    

       200410月下旬 岡本 記