KenのWales 便り - No.11 " ♪ ♪ Snow dropsとPub♪♪"
>>> メニューページに戻る 岡本賢一
世界的温暖化のためか、今年はWalesでも草花の芽吹きが例年より幾分早い気がする。長い冬の終わりを告げ、早春の真っ先に咲くのが白い可憐な花、“Snow drops”。 15cm-20cm位の高さで指先くらいの花をつける。この花が咲くともう春が来たと私たちの心も浮き立ってくる。私がよく散歩する小道の南側斜面にこのSnow dropsが3株ほどあって、日当たりが良いためか、他よりも早く花をつける。
昨年見つけてから今年はいつ頃に花を咲かせるか気をつけていたところ、先日小さな白いつぼみをたくさんぶら下げているのを見つけて、ああWales もまもなく春と、心弾ませて帰ってきた。 Walesの国花、水仙もその黄色いつぼみを大きく膨らませている。 そして日に日に、陽が長くなってきているので、気分的にはすっかり明るくなってきた。 暗い冬の間はとかくパブにこもりがちなこちらの人々も、戸外に出てくることが多くなり、休日には自転車のロードレースの練習に勤しんでいるのを見かけるようになった。 日本の暦では啓蟄はまだでも、Walesはもう早春気分。
さて、英国で有名なもののひとつはパブ。 私の住むAbergavenny にも10数件のパブがあると思うが、Local communityの情報交換の場であり、田舎町の憩いの場でもある。春の明るい雰囲気になってきたので、先日久しぶりに覗いてみた。
若者向けのパブでは主としてディスコ音楽がうるさく鳴り響き、若者たちがパイントを飲みながら大声で話し、体でリズムをとっている。厳密に言えばこれらは昔からのパブとは言えずにいわゆるディスコのカテゴリーに入るのであろう。昨今は英国でも一般のパブの経営がなかなか難しくなっているそうで、客集めにいろいろ工夫がされている。 この手のパブに私のような年寄りが行くと悲劇で、騒音で話しは出来ない、若者ばかりで場違いになり何か落ち着かない。 まして金曜日のような休日前夜には、若い女性たちはこのときとばかり、寒い冬でもミニスカートにタンクトップ、それも極端に派手な格好をしてくるので、しばしば目のやり場に困ってしまう。
一方、従来の伝統的なパブではおおむね少し年配の人たちが集まってくるので安心できる。 大方は、中高年の3~4人くらいのグループがPintを片手にわいわい喋り捲っている。話の内容といえば、今年はWalesのRugbyが強いとか(事実ほんとに強いのです)、自分の庭に今年は新種のバラを植えることにしたとか、もう水仙の芽が出てきたといった具合に、日常の他愛も無いことが殆んど。 でもこの他愛も無い話題が重要なのであって、みんな延々と楽しそうに話している。私が時々行くこのパブに、一人の老人がいつも同じ席に座り黙ってビールを飲んでいる。風貌はよく言えばヘミングウエイ(写真でしか知らないが)をしのばせるようなひげを蓄えた丸顔のひと。 別の言い方をすればずんぐりむっくりの典型的なWales人。この人とは、話したことは無かったが、会うたびに目で会釈するのが礼儀になっていた。
この日はどうした風の吹きまわしか、向こうから“ライト”この辺の訛で“元気か”というような軽い意味で声をかけてきた。私がビターを頼んでいる間に、“お前はたまに見かけるが、どこから来た?” と、お決まりの質問がきた。“東京から”と答えると、“ここで何をしている”という。“仕事で”というと、“へぇ!こんなところで”と驚いたような顔をして“おまえWalesは好きか“とたたみかけてきた。“好きだよ”というと、“へぇー、俺は大嫌いだね、こんなところに日本から仕事に来るやつの気がしれねー!” とはき捨てるように言った。一瞬、私が日本から仕事をしに来ているのが気に入らないのかと思ったが、“ここには何も無いじゃないか、住む気もしない。”というので、Wales嫌いなのだ、とわかった。
Wales人でも、Walesが嫌いという人が結構いるが、嫌いといっても、冬のWalesの天候がいやだとか、雨が多くていやだといった程度で、全面否定ではなかった。これはおそらく、日本人でも外国人相手に自国を全面否定はしないのと同じで、普通はそうした愛国心が若干は働くと思っていたが、このおじさんはいささか違っていた。 私が“イングランドと違って山あり、川ありで、人間は親切、私はすきだね”というと、お前は馬鹿かというような顔で、“俺は嫌いだ”の一言で、後は黙りこくってしまった。“ならばどうしてここに住んでいるのか?”と聞きたくなったが、そんな雰囲気でないのでこちらもだまってしまった。 このおじさんとの短い会話はSnow Dropを吹き飛ばし、飲んでいたビターを必要以上に苦くしてしまった。 2005年2月中旬
 早春のSnow drops
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