KenのWales 便り - No.10 " ♪ 冬の星空♪♪"
>>> メニューページに戻る 岡本賢一
2週間ほどの慌ただしい日本滞在から、ここWalesに戻ってきた。どんよりとした空から冷たい雨が降りしきり、東京のあの青い空はどこに行ってしまったのだろうか、と思えるほどである。 毎年のことながら、春分頃までは青空もなく、暗くて陰鬱な冬をじっと耐えねばならないのだが、それでも冬至からまもなくひと月、確実に日が長くなってきている。自然は本当に正直である。 2月になれば春の訪れを象徴するSnow dropが咲き始めるであろう。
さてこの暗く陰鬱な冬はとかく悪い面ばかり強調されがちであるが、思わぬところでよい面もある。 そのひとつに、太陽が地平線深く沈んでしまうため、めったには無いが夜間快晴に恵まれれば、それはすばらしい星空が見られる。田舎に住んでいるおかげで、町のいわゆる光害も少なく、特に月が無い夜は漆を流したような漆黒の空にダイヤモンドを無造作に撒き散らしたように無数の星がきらめき、思わず感嘆の声を上げたくなるほどである。
このような恵まれた夜は、寒いなどといっておられずに、小型の望遠鏡を担いで近くの小高い空き地に行き、もう東京ではほとんど見られなくなってしまった星雲や星団などを楽しんだり、はっきりと見える星座の姿かたちから遠くギリシャ神話に思いをはせたりする。
このギリシャ神話にまつわる話しのひとつで、最近ふと気が付いたことがある。 以前も述べたが、ここは北緯52度と東京に比べて大変高い緯度にあるので、当然のことながら北極星の位置が高く、その周りを回っている星座なども日本で見るよりはるかに高く日周運動をしている。 北極星の周りの星座で有名なものとしては、小熊座、大熊座、カシオペア座などがあるが、この地では大熊座が地平線の下に沈まず年間を通して見ることが出来る。 日本では北斗七星として有名なこの星座も、東京あたりでは、緯度が低いために、秋から冬にかけてかなりの部分が地平線下に沈んでしまい、またビルなどが邪魔をしてほとんど見えなくなる。
この大熊座、小熊座にまつわるギリシャ神話では、この二つの星座は永久に地平線の下(海の中に入れない)には沈まないことになっているので、ここで一年中見られる姿が神話どおりの話かなと、ふと気がついた。 星座にまつわるカリストー(大熊座)とその息子アルカス(小熊座)の悲しい物語は後世にOvidius により作られたといわれているが、これがいずれにせよギリシャの地で生まれた神話ということを考えれば、地理的にアテネがほぼ北緯39度に位置しているので、東京の35度とそう違わない。 となると、浮かんだ疑問は、アテネでは大熊座は年中沈まないのかな? ということで、東京とわずかしか緯度が違わないから沈むのではないかと思うのであるが、神話では沈まないことになっている。
はてな? 確信がもてない。 Ovidiusの“転身物語”や呉茂一さんの“ギリシャ神話”でこの部分をもう一度読み直してみたがやはり間違いない。 そうするとヘラの怒りに触れたカリストーが永久に水浴びを出来なくさせられた話は、地理的事実とはかけ離れた話かなとも思うのだが。 所詮、どこの神話であれそれが想像上のもので非現実的であることを考えれば、しかもそれがさらに星座の物語に転化したことを考えれば、こんなことに目くじら立てなくていいことかもしれないが。 もしどなたかご存知の方がおられたらぜひ教えていただきたく。
2001年1月中旬
雪の後、快晴になったWales
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