KenのWales 便り - No.12 " ♪ ♪ Laver breadと醤油♪♪"
>>> メニューページに戻る 岡本賢一
Walesの国花、黄色の水仙が満開となり、ひと月も咲き続ける八重桜が咲き始めて、Walesは春の真只中。春分が過ぎ、そして27日から夏時間に切り替わるともう気分は初夏、といっては気が早すぎか。
さて表題の‘Laver bread’とは、パンの種類ではなくWales特産の海草、日本で言う海苔のこと。ただし、日本にあるあの海苔巻き用海苔や味つき海苔ではなく、緑色をした生の海苔を想像していただきたく。
もう20数年前、初めてこのWalesの地を踏んだ際、あるレストランでメインの料理の付け合せに‘Laver bread’とあって、わけがわからぬまま頼んだのが初体験。油で揚げてあって味も素っ気も無いような付け合せであった。
この頃はまだ、英国料理といえば、わざわざ‘まづいの素’をかけてあると、口さがない連中に悪口を言われるほどで、英国料理というと、ローストビーフや肉に塩コショウして簡単に焼くか又は煮たりしたものに、ジャガイモ、にんじん、インゲンやブロッコリーなどの茹で野菜か、チップスが付け合せについてくるのがほぼ定番であった。その野菜も緑色が茶色になるまで茹でたもので、量も一人では絶対に食べきれないほどの分量であった。当時英国人は、こうしたものをなんとも思わずか黙々と食べていた。
思い出せば、その後Walesに来るたびに、火を通しすぎた硬い肉に茶色のブロッコリーの洗礼を受けて、これならフィッシュアンドチップスが一番いいと思ったほど。事実これに例のヴィネガーなどかけずに日本の醤油をかければ、日本人にはなんとも美味になることを知ったのはたしかその頃であった。
これが1990年代に入ると、いわゆるNew Britishという料理ブーム、外食ブームが巻き起こり、この10年間でレストラン事情は一変してしまった。 今ではLondonは言うまでも無く私が住むこの田舎でさえ、気の利いたレストランが3―4軒はある。 そこでは以前では想像もつかないほどの洗練されたおいしい料理を出している。 これらの評判のレストランは決まって地元の食材を取り入れて一皿を仕上げている。 Welsh lamb、Welsh Black Beef, 魚なら近くのWaye川、あるいはUsk川の鱒といった具合。
したがって、以前のように食のStress解消にFish & chipsに醤油をかけて食べる必要もなくなってきた。 そしてLondonから始まって英国に広がりつつある日本食ブームもここWalesにまで及んできて、Cardiff に行けば日本食や回転寿司のレストランもある。日本人から見れば決して満足のいく味ではないにしてもそれなりに楽しめるようになった。
面白いのは、これらの店の客はほとんどの場合、日本人よりも地元の人たちのほうが多くて、まだ一部の人たちとはいえ、それだけ英国人にも日本食が浸透してきたということ。
さて、この日本食には無くてならない醤油、日本食レストランに来るような人たちはまったく問題ないが、Walesでは大多数の人たちは、まだまだ醤油というと顔をしかめて、そんなものは、口にしたくないというレベル。
私がいくら、刺身に醤油とまではいわないが、一度で良いから、焼いた肉や魚に醤油をかけてみてほしいといっても、とんでもない、という顔で‘Oh, No’と一蹴されてしまう。
いろいろな面で保守的な英国人ですが、食に対しても大変保守的でNew Britishブームといわれながら、いまだに多くの人たちは極端な変化は好まない。
さて‘Laver bread’、冒頭に書いたように、地元では油で揚げて何かの付け合せにするかあるいは‘Laver bread’入りのソーセージといった具合で、あまりそれそのものを味わうという使われ方はしない。それにあまりたくさん採れるものでもなさそうで、レストラン以外ではなかなかお目にかかれない。 ところが先日たまたま立ち寄った魚屋に生のラバーブレッドがあったので、少しばかり買ってかえり、いかにして食べたらいいか考えた結果、結局マッシュルームを刻んでバターでいためこれにだしと酒、醤油を加えてさらに‘Wales海苔’を加えて少しばかり煮込んでから食べてみた。 醤油とWales海苔の香りが微妙な味をかもし出し、そして暖かい炊き立てご飯にかけてみたらなんともいえぬいい味になった。 ‘このマッシュルームがえのき茸かシメジならばもっといいだろうに’などと少しばかり贅沢な思いがよぎったが、次の瞬間にはご飯のお代わりをしていた。 2005年3月下旬

春のWalesの山(Pen Y Fan付近)と貯水池 |