Wales Japan Club logo


KenのWales 便り - No.13 " 文集「だいすき」♪♪"

>>> メニューページに戻る

                  
                                                岡本賢一



 夏時間になり、すっかり日が長くなった。日没時刻も最近は約8時頃と遅くなってきた。仕事を終えた後、ゴルフやテニスに興じる人々も増えてきた。

冬の間、閉じ込められていた屋内から、山間部の牧草地帯に放牧された羊や牛たちも気分よさそうに草を食べている。そしてその間を小さな子羊たちが跳ね回り始めた。

さて今年もWales 日本人補習校の文集が届いた。 題して「だいすき」。覚えている方もおられるでしょうが、私がこの「Wales便り」を書き出すきっかけとなった文集である。

小学校低学年から高校生までが同じ題でそれぞれの「大好き」を綴っている。この学校のすごいところは、先生方まで同じ題で文を書き文集に載せていることである。担任の先生から校長先生までである。普通、先生方はおおむね評論家になってしまい、巻頭あたりに意見を書いておしまいであるが、ここでは先生方までそれぞれの「大好き」を書いておられる。 生徒と同じ視点で文を書くという、なんとすばらしい指導方法だろう。

さて文集の中身であるが、それぞれの生徒が大好きなことについて、たとえば大好きなスポーツ、大好きなファンの人、大好きな兄弟や友達など思いをつづっている。 今年も私が感激させられたのは、親の転勤などで、言葉も通じない異文化の中に突然舞い込んで、言葉が通じず、友達もなく、学校(現地校)には行きたくない、いやだと悩んでいた子供たちに、ある日突然クラスの誰かから声をかけられて、以来クラスに溶け込み、世界が一変して学校が楽しくなり、大好きな友達になった、といった話や、あるいは当初は英語が話せずクラスのみんなに無視されていたが、算数がよく出来たのでそれでがんばって常にトップになったので、とうとうみんなから尊敬されるようになった話、などなどである。子供たちがいかに悪戦苦闘しながら最後は現地に溶け込んで[大好き]といえるような友達を作っていったか、実に生き生きと書かれている。 中で、一番印象に残った「大好き」は、小学低学年の生徒が書いたもので、ようやく学校にも慣れて友達もでき、楽しくなったが、忘れられないこととして、ある日、迎えに来てくれるはずの母親がいつまで待っても来ない。待っているうちに雪が降り出し、頭に雪が積もりはじめ困ったなと思っていると、通りかかった高校生が声をかけてくれて、彼のしっている家に連れて行き、母親が来るまでこの家で待てるように、頼んでくれた。 この生徒は、この親切と大好きなWalesは生涯忘れないと書いて、最後に「有難うWalesの人たち」と結んでいる。単純ながらなんとすばらしい結びであろうか。

小学校の低学年であるから、大人のような洗練された文章ではないが、伝わってくる純粋な気持ちは、勝るとも劣らない。

大人でも慣れない土地で、困ったときに差し伸べられる親切は、ありがたく忘れがたいものである。まして小学校のこの子にとっては、まさに地獄で仏の境地であったろうと思う。

こうした体験を経て育っていった子供たちが、将来異文化を超えて、国際的な活躍をしてくれることを願う。

                                        20054月中旬