KenのWales 便り - No.2 "うるわしき5月に"
>>> メニューページに戻る
「うるわしき5月に」、シューマンがハイネの詩に作曲した歌曲集「詩人の恋」の第1曲です。 この季節いつもこの曲の美しいメロディが私の中で自然にわいてきます。ピアノ伴奏と詩につけられたメロディが見事に融和し光り輝く新緑のなか詩人の愛の感情を歌い上げています。 そんな5月の声を聞くと、北緯52度のこの地でも花が咲き乱れ、まばゆいばかりの新緑にあふれます。常緑樹の濃い緑と落葉樹の芽吹いたばかりの淡い緑の対比が、なんとも美しい色彩の展開をみせてくれています。一言で新緑といってもよくみればカドミウムグリーンからクロームグリーン、そして光の加減で淡い赤色にみえたり、日の光に白くきらきらと輝いたりします。そして少し風が吹くとさまざまな緑彩の乱舞となります。 小動物たちもこの時期には大変活発に動き出して、ウサギやリス、雉などが野原で駆け回っています。最近、私の家の台所からも毎朝のように一匹のリスが坂道を駆け上がっていくのが見えます。 大変ほほえましく、おそらく彼らもこの麗しい5月を楽しんでいるのであろうと思いたいのですが、現実的にはそれほど住みやすい世界でありません。 この美しいWalesの山間の田舎道を車で走りますと、多くの小動物たちの無残な姿が道端にみられます。 リスやウサギ、そして大きいのは羊まで、みな車に轢かれたものです。 小動物といえども、私には痛ましく思えるのです。そしてWales のみならず英国内全体で年間どのくらいの数の動物が轢かれているか考えると、かなり多数に上ると思えるのです。何でも数万匹になるということを聞いたような気がします。 動物好きの、特に犬が大好きな英国人にとって、こうした現象をどう考えているのか聞いてみたくなり、何人かの知人に、尋ねてみました。 ほとんどの人間が、「うん、まあ仕方がないね」、で終わってしまい、かわいそうだとか、何とかしないといけないね、などの感想はまったくありませんでした。 そこで「犬が轢かれたらどうだ」と聞いてみたら、それは大きな問題である、という。 それでは、動物に対する差別になるではないかと、突っ込んでいくとだんだん曖昧になり、まあ難しいことは言わずにビールでも飲もう、ということでごまかされてしまいました。 この時期、小動物たちにとっては決して「うるわしき5月」ではないのです。 そして今朝も、あのリスが坂道を駆け上がっていくのが見えました。 いつまでも元気な姿を見せてほしいものです。
2004年5月初旬 岡本 記
|