KenのWales 便り - No.4 "夏至"
>>> メニューページに戻る あっという間に夏至になった。北欧など北の国では‘夏至祭り’をやるが、このあたりではあまり聞いたことがない。おそらく高緯度に住んでない人々には、それほど夏至というものに意味がないのであろう。私には、ついこの前、春分を迎え、これからは日に日に陽が長くなると、気分的にうきうきしていたのが、もうこれからは日1日と短くなると思うと、なんだか滅入ってしまう、と言っては少々気が先走りすぎか。
このところ約1月間好天が続き、Wales では珍しく雨らしい雨もなく、太陽が沈んだ後もいつまでも明るい北の空を眺めて、ここでは一晩中天文薄明(太陽が地平線の下6度から18度の間にある間を言う)が続くのかなと、大げさな想像をしている。冬の漆黒の空と違って真夜中でも太陽がそれほど地平線下深く沈まないため 北の空はほんのりと明るく、天空高い北極星もその光を失っている。
日没が夜の9時過ぎのため、仕事が終わった後も、屋外でのスポーツや活動が十分にでき、従い人々はさっさと仕事を切り上げて、(そうでなくても時間できちんと切り上げるのがこちらの人々であるが)庭いじりをしたり、ゴルフに行ったり、山歩きなどを楽しんでいる。もちろんパブでパイントビールを傾けて、おしゃべりに興じる連中も多い。 私も先日、夕食を済ませた後に、Abergavenny の町を流れるGavenny川のほとりを歩いてみた。 ちなみにAbergavenny という町の名前の由来は、AberがWales語で河口という意味をもっており、この町でGavenny川がもうひとつのUsk川に合流しているのでこの名前が付いたという。 多くの人は、このUsk川沿いを歩くかまたは、人工の川Canal沿いを歩くのが普通であり、Gavenny川はあまり歩かない。
川の両側に茂る草むらや潅木にはたくさんの鳥たちがいて、頻繁に飛び回っている。Black birdがその美しい鳴き声を披露してくれており、野鴨もいてちょうどコガモが5羽ほど親にくっついて泳いでいた。 しばらく誰もいないのどかな散歩を楽しんでいると、向こうから長靴をはいたずんぐりむっくりの、一目でそれとわかる典型的Wales 人の中年男性が歩いてきた。私が‘こんばんは’と言うと‘うー’という異様な返事が返ってきた。奇異に感じて、‘歩くには実に気持ちがいいですね’と重ねて言うと、‘お前どこか ら来た’とぶっきらぼうに質問された。
‘ここAbergavennyに住んでいるよ’というと、‘ここには余り人が来ないが、なぜここに来た’とまたまたぶっきらぼうな質問。 何かしかられているような感じであったが気を取り直して、‘みんなUskを歩くので、今日は、はじめてこのあたりを歩いてみたんだ。 人が少なくてUskよりいいね。’というと、‘おお’といって、はじめて顔がわずかにほころんだ。 そしてやおら、‘俺は雨の日も風の日も毎日ここを歩いている。Uskもいいが、ここは人が少ないので好きなんだ。お前を見たときはまた変なやつが来たなと思ったけど、ここが好きならまあ歩いてもいい’と、いわれて許可をいただいてしまった。 私はきっと彼の聖域に踏み入ってしまったのだろう。
2004年6月下旬 岡本 記 |