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先輩インタビュー24 福井旬弥君

1. 滞在期間

 1989年にウェールズで生まれ、11歳まで滞在。補習校には小学3年生の1年間を除く1~5年生の4年間在籍しました。
2. 日本に帰国して

 私は11歳で日本に帰国する前に、小学3年生の1年間を石川県の小学校で「逆留学」する形で過ごしました。これは、日本を知らずに育った私に日本文化を肌で感じさせたい、と父が提案したもので、もともと日本文化(主に玩具や駄菓子など)に興味があった私は二つ返事でこれを了承しました。
 都市部の学校ですら帰国子女は当時珍しい存在でしたが、全校生徒70名に満たない石川県の片田舎の小学校に私が転入した際には、学校中が「外人が来た!!」と大騒ぎになりました。こういった石川県ののどかな環境で1年間過ごしたことで、私は日本の空気を存分に感じることが出来ました。同時に、それまで家庭内と補習校でしか使わなかった日本語はめきめきと上達し、ウェールズに帰る頃には流暢に方言を使いこなす能登っ子に成長していました。代償として英語を完璧に忘れましたが(笑)。
 ウェールズに帰ってからは主に忘れた英語を取り戻すことに集中しましたが、これに際して上達した日本語が劣化するようなことは無かったと思います。これはひとえに補習校という日本語の教育基盤があったからこそだと考えます。補習校が無ければ日本語も英語も中途半端で、どっちつかずな状態になっていたでしょう。
 小学5年生の終わりに、父からまた石川県に行かないか?との提案がありました。3年生の時に過ごした1年間は楽しかった記憶しかなかった為、私は深く考えずにこれを承諾しました。今考えてみると、この時から父の策略に嵌っていました。と言うのも、逆留学中の小学6年生の夏、このままウェールズには帰らずそのまま日本に本帰国する旨を言い渡されたからです。まあ、騙されたわけです(笑)。
 父は、小学3年生の留学で一度私を日本に慣れさせ、小学6年生の留学中に本帰国を告げることで私を断れない状況に置いたのです。結果としてこの作戦は思惑通りにすすみ、私はさほど大きな抵抗感無くそのまま日本社会に溶け込むことが出来ました。あくまで結果としてはこの父の作戦に感謝はしていますが、この時の一本取られた感は今でも拭えません。
3. 近況

 帰国後、横浜の市立中学校へ通った後、高校受験を経て慶應義塾志木高校に入学、そのまま内部進学で慶應義塾大学へと進みました。中学では、ウェールズでもやっていたのでサッカー部に在籍しましたが、高校からは趣向を変えて柔道部に入りました。体格があったので格闘技を選んだ、という理由もありますが、人生の大半を海外で過ごした為日本的なものに逆に惹かれた、という側面もあります。
 大学でも柔道を続け、他の友人たちがバラ色のキャンパスライフを謳歌する中、私はむさ苦しい男共と週6日、朝夕汗だくになって練習していました。しかし、これらの犠牲(?)を払うことにより、ウェールズでは体験することの無かった先輩後輩の上下関係や、集団の中の規律などを、身を持って学びました。また、私の所属した慶應義塾體育會柔道部は1877年に創部された日本最古の運動部ということもあり、130年以上に亘って蓄積された伝統にも触れることが出来ました。
 2011年3月現在、私は柔道部を引退し束の間のキャンパスライフをエンジョイしています。4月からは大手総合商社の新入社員として社会人デビューしますが、ウェールズ10年、日本12年で蓄積された経験を活かし、一日も早く取締役になることでウェールズ日本人補習校の名を世界に轟かせたいと思います。
4. 後輩たちへのメッセージ

 補習校に在籍した先輩として、皆さんに伝えたいことがたくさんあります。簡潔にまとめる為に、私が皆さんと同じ年齢だった時に不安だったことに対してQ&A方式で答えたいと思います;

Q. 日本の学校、社会に上手く馴染めるでしょうか?
A. 帰国子女だから馴染めない、と言うことはありません。むしろ私の周りの帰国子女はモテモテでした。日本的な風習に最初は戸惑うかもしれませんが、「郷に入れば郷に従え」という言葉があるように、異なる風習を拒絶するのではなく徐々に受け入れていくと早く馴染めると思います。

Q. 受験が心配です。国語とか無理です。
A. 今皆さんがやっている国語や算数の勉強は、同年代の日本の小中学生のやっている内容となんら遜色ありません。むしろ、英語面で皆さんは大きなアドバンテージを持っています。とはいえ受験なので、今後国語や算数をどこまで伸ばせるかは皆さんの努力次第です。
大丈夫。皆さんの先輩方は皆優秀な大学に通っています。

Q. 本帰国したら英語忘れちゃいませんか?
A. 英語を使わず放って置いたら確かに忘れると思います。だから使いましょう。ウェールズの友達とSkypeで連絡取り合ったり、その辺の留学生を捕まえて世間話でもしましょう。Simpsons やFriends といった海外の番組を聞き流しているだけでもいいと思います。

これら以外にも、不安に感じていることはあるかと思います。しかしあと数年もすれば、それらは皆杞憂であったと感じるはずです。皆さんは既にウェールズと日本の二つのアイデンティティを有することで、普通の人の倍人生を楽しむことが出来ます。本帰国する人もそうでない人も、些細な不安などどこかへ追いやって、今しか味わえない補習校ライフを満喫して欲しいと思います。