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補習校便り 2007年6月

 家庭の教育力

田口知子

山田哲朗さんからお聞きした話を、三週続きでご紹介しました。私がお伝えしたかったことは、帰国後の英語力保持情報だけではありません。私が山田さんのお話を伺って、とても印象に残ったことが二つあります。
 まず、子供の可能性を伸ばすには良き家庭環境が必要だということです。小学校入学前に帰国した山田明希さんが、中3の時に大阪府の英語の暗誦大会で優勝したというニュースを聞いた時は、ずっと英会話教室に通っていたのだろうとしか思っていませんでした。ところが、帰国後もずっと、ご両親が意識して英語環境を作り出されたことなど、ご両親の長期的で継続的な努力があったことを初めて知りました。しかも、ゆとりを失わず楽しむ部分も失うことなく。だからこそ、お子さんの応援をずっと続けることができたのでしょう。もちろん、高学年になってからは、子供の意欲がものを言います。明希さんには、幼児の頃のように意思疎通が自由にできない悔しさが、バネになったとのことですが、子供が学ぶ意欲を持つかどうかが、力を伸ばす要となります。問題は、そういう意欲を引き出せるかどうかなのです。子供の可能性を伸ばすには、近道はありません。時間をかけて、手間をかけて、子供と向き合いながら前進していくことしかないのだと、改めて思いました。
 次に、英語の表現力についてです。英語が流暢に話せても、大切なのは、自分の心から発信できるものを持っているかどうかです。おそらく明希さんは、とても感性豊かに「葉っぱのフレディ」を読み味わうことができていたのだと思います。英文を読んで理解するには、もちろん英語力が必要ですが、文章を読んで感動したり深く考えたりする部分は、英語とか日本語といった言語力には関係がなく、その人が持つ想像力とか感受性によるのではないかと思うのです。そういうことを考えていくと、明希さんは読書好きなのだろうと思います。これからの高校生活でさらにいろいろなチャンスに恵まれ、活躍の幅が広がっていくことを心より応援しています。山田さん、貴重なお話を聞かせていただき、どうもありがとうございました。(6月2日)

ダブリン研修会に参加して

田口知子

23、24日とダブリンで開催された現地採用講師研修会に参加しました。
 この研修会は、外務省と文部科学省の財政援助で、現地採用講師の資質向上を目的に89年から行われています。日本からの派遣教員(生徒数が100名以上の補習校に派遣される)がいない補習校が持ち回りで幹事校となります。(本校は2009年にあたる予定)英国地区補習校は、四月に創立されたケント校を入れて、全部で10校あります。(ロンドン、ダービー、マンチェスター、テルフォード、ヨークシャー、スコットランド、北東イングランド、ウェールズ、ダブリン)これまで平日開催の研修会が、今年度は土日で行われた点が、画期的でした。ダブリン校に限らず、どの補習校でも国際組・永住組の割合が増加傾向にあります。(ダブリン校は半数、本校は三分の一)そこで「国際児教育」をテーマに取り上げ、国際児の日本語力とモチベーションの向上・維持を図る方策や学級内の個人差を埋めていく指導方法を探ることになりました。
 23日は、朝会の見学からスタート。幼児部(年中年長)19名(内14名が国際児)がカエルの歌とあんぱんマンの歌を披露してくれました。入園者は定員一杯で待機者がいるそうです。また国際児は全学年にわたり、中1と中3にも各1名います。朝会の後、ダブリン校の先生方の授業と派遣教員による提案授業を見学しました。午後は、見学した授業に基づき、授業検討会をもちました。
 24日の午前中は、各校が「漢字指導」「読書意欲向上」「家庭との連携作り」のテーマで実践報告をしました。午後は、ロンドン補習校校長の講演「英国地区補習校に求められる日本語指導・国語教育」があり、次のような話が印象的でした。①先日、日本で発表された漢字力調査結果によると、小中で習う漢字1006字の中で三分の一が書けなかったり、読めなかったりする。日本でも漢字の勉強は課題である。漢字指導を工夫して行っている海外の方が、もしかしたら日本より進んでいるかもしれないし、補習校だからできることがあるかもしれない。②教育の目的は、人格を完成させることにある。責任感や協調性など人格形成に、補習校も寄与している。学習面での指導は足りない部分があるかもしれないが、子供が苦労を乗り越えていく過程に教育の成果が出る。③学校で学ぶ意義は、みんなで学ぶということ。集団の中で言葉が育つ、相互啓発により新しい見方や考え方が育つ。また学校には、目標を示し、評価を下し、学びに系統性をもたせる指導者たる教師がいる。これらが子供の成長へとつながる。④言葉を覚えるプロセスで、プレイグラウンドランゲージ(コップに水を入れて、のように具体物を通して覚えた言葉)は、覚えるのは早いが失いやすい(低学年の子供が帰国したら英語を忘れるように)が、教室で学ぶ抽象的な概念であるクラスルームランゲージは、忘れる部分もあるが、残る部分が持続する。この理論によると、補習校は母語の保持に大きな働きをしている。(6月30日)

母の声

我が家の語彙力アップ対策
 特別なことはしていないつもりです。ただ、英国での生活が長くなるにつれ、英語でのボキャブラリーが増えてきて、日本語での語彙が追いつかなくなってしまっている現状があり、家の中ではしっかり日本語を使わせて、意味が分からない時は、なるべくその場で「そんな言い方では他の人は分からないよ。こう言ったら、分かるけど」とか言うようにはしています。よくけんかにはなりますが。
 補習校の宿題は、その日の内に目を通しながら、子供に確認しています。子供自身の宿題なので、きちんと聞いてくるように言っています。先生方には宿題を出す時、子供たちがちゃんと理解しているか、確認していただけたらと思います。少し難しいかなという場合は、通信などで親に説明をつけていただけると、家庭でサポートもしやすいのではと思います。(低学年 母)(6月2日)

低学年の語彙力アップのアイデア(談話)
(お子さんが小1の時に実践されていたそうです)
 平仮名を覚えさせるために、始めたカードゲームです。お菓子をどこかに隠しておいて、その場所を示す言葉をポストイットに書いておきます。たとえば、マットレスの下、国語辞典の右の色紙の下、引出しの中…と順番に見ていくと、最後にお菓子が見つかるというわけです。漢字を習ったら、漢字も使えます。時間にゆとりがある時は、毎週のように親子で楽しんでいました。今は現地校と補習校の宿題があるので、たまに思いついた時にやっています。(低学年 母)(6月16日)